【メンテナンス】ウエットスーツ寿命が2倍変わる【正しいケア方法を職人が解説】

■ 「5年目です」と言って驚かれるウエットスーツの秘訣

ウエットスーツのメンテナンスで、このようなお悩みを持たれている方は多いと思います。

💭 お悩み①: ウエットスーツがすぐに硬くなってしまい、3年程度で買い替えている
💭 お悩み②: 正しいお手入れ方法がわからず、なんとなく水で流すだけで済ませている
💭 お悩み③: 専用シャンプーを使っているのに、思ったほど長持ちしない

この記事では、こういったお悩みに答えます。

正しいメンテナンス方法を知っているかどうかで、ウエットスーツの寿命は大きく変わります。

元ウエットスーツメーカーの職人が実践している具体的な手順を理解して、次回のサーフィン後から実践しましょう。


■ 寿命を左右する3つの重要ポイント

塩分除去が最優先

ウエットスーツの劣化を早める最大の原因は、海水に含まれる塩分です。塩分は生地の奥深くまで浸透し、そのまま放置すると素材を硬化させてしまいます。実際に、3ヶ月放置された修理品を表に返したところ、まだ塩水が出てきたという事例もあるほど、塩分は生地に残り続けます。

海から上がったら、まずペットボトルの水で砂と塩を軽く落としましょう。帰宅後は、ぬるま湯(体温以下、40度未満)に10分程度浸けて、塩分を溶かし出すことが重要です。特にファスナー周り、首周り、股周りは塩が溜まりやすいので、念入りに洗い流しましょう。

🔍 重要ポイント: 熱湯は絶対に使わないこと。特に冬場、冷え切ったウエットスーツに熱湯をかけると、温度差で接着剤が剥がれてしまいます。踏み洗いよりも浸け置きの方が、生地に優しく効果的に塩分を除去できます。

裏→表の2段階乾燥

ウエットスーツは必ず「裏を乾かしてから表に返す」という2段階乾燥を行いましょう。裏返しのまま保管すると、内側に湿気が残り、カビや臭いの原因になります。また、3ミリ以上の厚さがあると、裏返しのままでは表側が完全に乾きません。

まず裏返しのまま干して内側を完全に乾かし、裏が乾いたら必ず表に返して再度干しましょう。表に返すことで、外側の劣化(剥がれ、ほつれ)を早期発見できるというメリットもあります。

💡 ポイント: サーキュレーターや扇風機で風を当てると乾燥が早まります。浴室乾燥機も有効で、ドライヤーの冷風・送風モードも使えますが、温風やアイロンは厳禁です。

紫外線対策と保管場所

ウエットスーツは石油製品(ネオプレンゴム)なので、紫外線に当たると素材が劣化・硬化します。サーフボードが黄ばむのと同じ原理で、日向に干すと乾燥は早いものの、生地の寿命が大幅に縮んでしまいます。

必ず日陰で風通しの良い場所に干し、保管場所も紫外線が入らない冷暗所を選びましょう。窓際も紫外線が入るので避けることが大切です。

🔍 重要ポイント: 「何年目ですか?」「5年目です」「えっ!?」と驚かれるほど状態が良いウエットスーツを保つ秘訣は、この日陰保管にあります。雑に扱うと3年で買い替え、丁寧に扱えば5年以上使えるという差は、数万円の節約につながります。


■ 絶対にやってはいけない4つのNG行為

熱湯をかける

冷え切ったウエットスーツに熱湯をかけると、温度差で接着剤が一発で剥がれてしまいます。特に冬場は、海水で冷たくなったウエットスーツに熱湯をかけたくなる気持ちはわかりますが、これは致命的なダメージを与える行為です。

必ずぬるま湯(体温以下)を使い、急激な温度変化を避けましょう。

畳んで保管する

ウエットスーツを畳んで保管すると、シワが付いて取れなくなります。シワの部分から劣化が進み、そこから破れや剥がれが発生しやすくなります。

吊るし保管が基本で、後述する「海老反りスタイル」で肩への負担を分散させることが大切です。

足で踏んで脱ぐ

海から上がった後、足で踏んでウエットスーツを脱ぐ光景をよく見かけますが、これは一発でウエットスーツを壊す行為です。生地は伸びても糸は伸びないため、縫い目が破れてしまいます。

必ず手を使って丁寧に脱ぐ習慣をつけましょう。

アイロンをあてる

ワックス除去などでアイロンを使う人がいますが、素人は避けるべきです。アイロンの熱で生地が焦げたり、接着剤が剥がれたりする危険性があります。

💡 ポイント: 車の中での高温放置も避けましょう。また、砂だらけのまま持ち帰らず、海から上がる時点で砂を落とす意識を持つことも大切です。砂が生地を傷つける原因になります。


■ 正しいメンテナンス手順を詳しく解説

海から上がった直後のケア

海から上がる時点で、砂と塩を軽く落としておくと後のメンテナンスが楽になります。車にペットボトルの水を常備しておき、ウエットスーツを脱いだらすぐに軽く流しましょう。

この一手間が、帰宅後の塩分除去を効率的にします。

帰宅後の塩分除去方法

帰宅したら、ぬるま湯(体温以下、40度未満)に10分程度浸けて塩分を溶かし出しましょう。ファスナー周りは塩で錆びやすく、故障の原因になるため特に念入りに洗い流すことが重要です。

ファスナー修理は高額なので、予防が何より大切です。浸け置きで塩分を溶かし出すのが最も効果的で、踏み洗いより生地に優しい方法です。

乾燥の正しい手順

まず裏返しのまま干して内側を完全に乾かし、裏が乾いたら必ず表に返して再度干しましょう。裏返しのまま保管すると、内側に湿気が残るだけでなく、外側の状態(剥がれ、ほつれ)をチェックする機会も失います。

表に返す習慣があると、修理が必要な箇所を見逃さず、早期対応ができます。

💡 ポイント: 3ミリ以上の厚さだと、裏返しのままでは表側が乾きにくくなります。サーキュレーターや扇風機で風を当てると乾燥が早まり、浴室乾燥機も有効です。

ハンガーのかけ方

ウエットスーツは「海老反りスタイル」で干しましょう。上半身をハンガーにかけ、下半身を後ろに回して肩に足を乗せることで、肩への負担を分散できます。

この方法なら、ハンガーの跡が付きにくく、型崩れも防げます。

ベルクロの扱い方

ベルクロ(マジックテープ)の硬い面(オス側)が他の生地に絡まると、柔らかい生地の表面がケバ立ちます。最近のウエットスーツ生地は柔らかいので、特に注意が必要です。

購入時についていた保護シートを捨てずに保管しておき、使わない時期はシートをベルクロに付けて保管しましょう。ケバ立つと見た目が悪くなるだけでなく、ベルクロがその部分にくっつきやすくなり悪循環に陥ります。

🔍 重要ポイント: ハンガー掛けの際も、ベルクロが他の生地に触れないよう注意しましょう。


■ 専用シャンプーは本当に必要か?職人の本音

専用シャンプーの効果

30年以上ウエットスーツに携わってきた職人の本音は、「専用シャンプーはほぼマーケティング」というものです。実際に専用シャンプーを使ったのは人生で1回だけで、それも試供品でもらったから試しただけという証言があります。

シャンプーを使ったからウエットスーツが柔らかくなるとは考えにくく、臭い取りには一定の効果がありますが、毎回使う必要は全くありません。臭いが気になる時だけで十分です。

すすぎ残しのリスク

専用シャンプーは粘度(とろみ)が高く、水で流しても完全に落とすのが難しいという欠点があります。すすぎ残した成分が乾燥すると固まり、逆に生地を硬くする原因になってしまいます。

「1回使ったことがあるが、落とし切るのがすごく大変だった」「これ全部流れないな」「これやってたら固くなりそうだなと感じた」という実体験から、中途半端に使うぐらいなら使わない方がマシだと言えます。

💡 ポイント: 使うなら徹底的に、何度もすすぐ必要があります。しかし、その手間をかけるなら、基本的な塩分除去と乾燥に時間をかける方が効果的です。

お金をかけるべき優先順位

洗剤にお金をかけるより、「塩分を落とす」「しっかり乾かす」「日陰で保管する」という基本を徹底する方が100倍重要です。余計な成分を残さないことが長持ちの秘訣で、洗剤に何千円もかけるのは優先順位が違います。

お金をかけるなら、乾燥環境(サーキュレーターや扇風機)や良いハンガー(肩に負担がかからない形状)に投資しましょう。浴室乾燥機があれば積極的に活用することをおすすめします。


■ 基本を徹底して、ウエットスーツを長持ちさせよう

ウエットスーツを長持ちさせる基本は、「塩分をしっかり落とす」「完全に乾かす(裏→表の2段階)」「日陰で風通しの良い場所に干す」「紫外線の当たらない場所で保管する」という4つです。

3年で買い替える人が見落としているポイントは、熱湯を使う、裏返しのまま保管する、足で踏んで脱ぐ、日向に干すといった、一見些細に見える行為です。これらを避けるだけで、ウエットスーツの寿命は大幅に延びます。

高価な洗剤や特別なケア用品は必要ありません。基本的なメンテナンスを丁寧に行うことで、5年以上使えるウエットスーツを保つことができます。次回のサーフィン後から、この記事で紹介した方法を実践してみましょう。

関連記事

コメント